~がん哲学外来との出会い NPO法人「がん哲学外来」設立記念の日~

~がん哲学外来との出会い NPO法人「がん哲学外来」設立記念の日~

 がん哲学外来市民学会ニュースレター編集人・

「佐久ひとときカフェ」スタッフ

星野昭江

『クアハウス佐久(当時)』のオーナーである片桐孝子さんに声を掛けられて同乗した車の行先とその目的について、私は全く知らなかった。2009年5月9日の朝のことである。2時間あまり高速道を走って「ハイ、着きました」と言われ、降りたそこは「東久留米市民プラザホール(市役所1階)」であった。

受付で渡されたプログラムと案内ちらしを見る。「NPO法人『がん哲学外来』設立記念シンポジウム~時代は何を求めているか~」、何のことやら。しっかりした表紙のプログラムの上部には「がん哲学外来とは、生きることの根源的な意味を考えようとする患者と、がんの発生と成長に哲学的な意味を見出そうとする人との対話の場である」と印刷してある。がん哲学、外来?対話、シンポジウム?何度か読み返して考えるのだが…、何がなんだか、分からない。まさに、チンプンカンプンとはこのことである。

すでに会場には50人ほどの参加者が着席していた。ほどなく基調講演の男性と女性、ふたりの方が演台に立ったけれど、時間も短く、内容は何も理解できないまま終了した。

ほどなく第二部のパネルディスカッションになったが、女性のパネリストたちが何人もいて切れ切れに聞こえてきたのは「訪問看護、在宅医療、看取り、がん患者をどうするか」など……、しかしそれらの言葉のつながりと今日の「がん哲学外来の設立記念」とがどのように結び付いていくのか、頭がぼおっとして混沌状態のまま、シンポジウム終了の予定時間となった。

5月だというのに外は夏の暑さだった。ぽかんと口を開けたままの私を誘って片桐さんが連れて行ってくれたのはレストラン、そこには先客がいた。紹介されて初めて先ほど基調講演をした男性・樋野興夫教授だということを知った。そしてその隣りにニコニコと柔和な笑顔のアメリカ人は樋野先生の奥さんのジーンさんだということも知らされたのである。

運命的な出会いだと言う人もいる。宿命だと言う人さえ、いる。「出会い」は神様からのプレゼントだと言った人もいる。

この日の樋野先生との出会いがなかったら私の後半生は全く違ったものになっていただろうと思う。あの朝、片桐孝子さんが車のドアを開けて東久留米まで私を連れて行かなかったら…、その車に私が乗らなかったとしたら…、小諸での田舎暮らしを選択しないで定年後もそのまま東京都に留まっていたならば…、もしも、もしもあの時に…。

「2009年5月9日土曜日午前10時、東久留米市役所1階市民プラザホール、夏のような日差しが照りつけていた」、と当時の日記にしっかり書きつけてある。