第39回『一億本の向日葵』 ~傍に存在を感じて~

第39回『一億本の向日葵』

~傍に存在を感じて~

 

「斉藤さん、誰も励ましてくれないの。」

がんの転移による体調不良で入院をされていた女性が語られた言葉。「離れて暮らす両親にアロマオイルでマッサージしてあげたいから、アロマオイルを学ぼうかと思って。」とお話された時の表情が、本当に生きる力に溢れていて、嬉しくなった私は何の迷いもなく「いいですね!ぜひやって下さい!」と応援の言葉をかけました。その言葉を聞いてから少し時間を置いて「誰も励ましてくれないの。斉藤さんだけ。」とお話されたのでした。その後、退院をされたその女性が本当にアロマオイルを学び、ご両親に足のマッサージをされたと聞いた時、嬉しさと同時に、手放しで応援してしまった自分の無責任さに対しての不安が解消されて、ホッとしている自分に気が付きました。

 

6月1日に東中野キングスガーデンで行われた「がん哲学外来ナース部会5周年記念講演会」に参加させて頂きました。そこで、沼野尚美先生(宝塚市立病院 緩和ケア病棟 チャプレン・カウンセラー)と樋野興夫先生のお二人のご講演を聴く機会に恵まれました。沼野先生は緩和ケア病棟の臨床で出会って来られた方のエピソードを交えながら、大事なことをユーモアも溢れる語り口でお話して下さいました。エピソードのそれぞれが心に迫るものでしたが、“今の喜びを共に喜ぶ”というお話は、私が出会ったその女性との対話そのもののように感じました。「誰も励ましてくれないの」という静かな叫びは、「未来の私ばかり気にかけて、今の私と一緒に居てくれないの」という今の時間に自分だけが取り残されている感覚に近いのかもしれない。そんな風に思いました。

過去も未来もそっと脇に置いて「今ある喜びを共に喜び合うこと」「今ある悲しみを共に悲しみ合うこと」。それが、樋野先生ご講演の中で語られる「いぬのおまわりさん=困っている人と一緒に困ってくれる人」の役割と繋がりました。「今喜んでいる」「今楽しんでいる」「今悲しんでいる」「今困っている」、その「今」この瞬間に共に在れた時、「明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげる」という樋野先生の言葉に処方箋が、両者にとって生きたものとなるのだと思いました。

 

寄り添うこと。

それは完全には理解できないことを自覚しながら、それでも理解したいと思うこと。

その人の言葉が、本当の意味でその人本人の心に届くよう私の耳を介して聴くこと。

決して力を奪わないこと。

それが数少ない今の私にできることだと自覚しています。

 

ひまわり担当🌻齋藤智恵美

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